
保育園や幼稚園、小学校の低学年の子どもなど、発達障がいの子の中には、ルールを守れない子がいます。
鬼ごっこをすると、鬼にタッチされても鬼をかわらなかったり、インチキをしてお友達に文句をいわれたりする子がいますよね。
なぜルールを守れないのか?
子どもがルールを守れない理由は大きく分けて2つあります。
- そもそもルールがわからない。
- 脳の特性が要因でできない。
ルールがわからないのはなぜ?
理由1記憶とプランニングの問題
例えば鬼ごっこは、じゃんけんをして鬼を1人決めて、鬼以外の子どもは走って逃げます。鬼にタッチをされたらタッチされた子が鬼に変わり、みんなを追いかけてタッチします。鬼ごっこはこの繰り返しですよね。
発達障がいの子どもの中には、このような単純なルールでも複数のことを(一連の流れ)記憶することが難しい子どもがいます。また一旦記憶できてもすぐに忘れてしまう子どもがいます。
なので、タッチをされて鬼になっても追いかけない子どもがいたりするわけです。
理由2ルールを聞いていない・理解していない
全体に向けて大人が指示(説明)をしても、誰に言っているのかわからずに聞いていない子がいます。また、言葉だけの説明や指示はイメージすることができずに理解できない子もいますし、集中して大人の話を聞くことができない子もいます(詳しくはこちらの授業に集中できない子の記事をお読み下さい。指示のポイントについてはこちらの記事をご覧下さい。)
脳の特性が要因でできない
脳の特性が要因でできない子を、ルールを守れない子と誤解してしまうこともあります。
理由3複数のことを同時にできない
特に自閉症の子は、2つのことを同時に考えてすることが苦手です。
例えばイスとりゲームなどは、音楽を聞きならが歩き回り、そしてイスを取ります。イス取りゲームは3つのことを頭の中で処理しなければなりませんが、それができないのです。(複数のことを同時にできない能の特性はこちらの記事をお読み下さい)
これをしながら(考えながら)あれもする(考える)ということは、自閉症傾向の子にはとても難しいことなんですね。
理由4感覚過敏・運動機能の問題
発達障がいの子の中には、感覚が過敏な子がいます。例えば鬼ごっこは鬼にタッチされますが、タッチされると痛いので出来ない子や、タッチされるとかんしゃくを起こす子がいます。
また、例えば見ながら書くなど目と手を同時に使うこと(協応運動といいます)が苦手だったり、粗大運動(体全体をつかった運動)や微細運動(手先などの細かい動き)が苦手な子どももいます。
聴覚が過敏な子は子どもたちの大きな声や音楽が苦痛に感じて、出来ない子もいます。太陽光で目を痛がる子、体温調節が苦手な子は炎天下での外遊びは苦手です。
理由5順番を待てない
ADHD傾向の子どもの中には、順番を待てない子どもがいます。ADHDの子どもは衝動的な面が強く出るため待つことができないんですね。待つことができないとルールを守らない子と見られてしまう場合があります。
どう対応したらいいか?
ルールが守れない子への対応の基本は、事前の説明と大人がサポートしながら一緒に遊ぶことです。
事前説明のポイント
- ゆっくりと何をいつどうやってするかを順序立てて、子どもがわかりやすいように具体的に伝える。
- 子どもが大勢いる時は全体に指示を伝えた後で、気になる子のそばへ行き、その子がわかりやすいように伝える(表情を見たり、復唱させたりして理解できているか確認をしましょう)。
- 絵や写真・文字などを使って子どもがわかりやすいように伝える。
- 支持はなるべく1つにして、1つが終わったら次の指示を伝える(例えば、最初に体育館に移動することを伝え移動をします。移動したら整列することを指示する、というように場面ごとに指示を伝える)。
- 子どもが興味のあることで意識を向けさせてから支持を伝える。
- 無理にルールを教え込まない。
大人が一緒に遊ぶ
ルールを覚えられない子、忘れてしまう子どもの場合は、大人がそばで一緒にルールを教えながら遊ぶことが必要です。また、順番を守れない・割り込みをするなどルール違反をする子の場合は、まわりのお友達から反感をかってしまうこともあるので、大人がうまく介在して、迷惑をかけさせない、迷惑をかけたときは悪意があってやっているわけではないことを周囲の子どもたちに伝えることが大切ですね。
大人が介在することで、発達障がいの子どもが誤解されることも防げますし、何より発達障がいの子ども自身が安心してみんなと遊ぶことができますよね。
※大人が一緒に遊びながら、その都度声をかけたり指示を出したりする時は、子どもが操り人形になってしまわないように注意しましょう。また自閉症の子は何度も声をかけられると混乱してしまいますので注意が必要です。
絶対に叱らずに褒める
ルールを守れないのは、子ども自身でコントロールすることが難しい脳の機能の問題です。ルールを守れないからといって叱ったら、子どもは叱られている意味すらわかりませんし、叱られた体験だけが記憶に残ってしまい、遊ぶことを嫌がってしまう場合もあります。ルールを守れたときは褒めてあげることを徹底し、絶対に叱らないことが大切ですね。
最後に
発達障がいの子がルールを守れないのは、脳機能の特性が要因です。発達障がいの子がルールを理解し守るということは、大人の支援がないと難しいことなんですね。
みんなで一緒に遊ぶという体験は、ある意味子どもの頃にしかできません。発達障がいの子が周りのお友だちと楽しくかかわり、楽しく遊ぶためには大人の協力が必要不可欠といえるでしょう。