
発達障害の子どもや大人の中には、外部から聞こえるすべての音が大音量で聞こえたり、ある特定の音が苦痛に感じる特性を持った人がいます。
聴覚過敏の問題は、彼らを悩ます大きな問題といえるでしょう。
聴覚過敏の例
- すべての音が大音量が聞こえるため、特定の音を取捨選択することができない。
- 子どもの泣き声を嫌る。泣いている子どもをたたく。
- パトカーなどサイレンの音を嫌がる。
- 運動会のピストルの音を嫌がる。
- 雨音を嫌がる。
- 大きな花火の音を嫌がる。
- 掃除機の音を嫌がる。
- 音楽の時間を嫌がる。
- 太鼓の音を嫌がる。
- 大きな声や大きな音を嫌がって耳をふさぐ
- 隣の教室の声や音が聞こえて授業に集中できない。
- ひそひそ話しが聞こえる。
などがあります。
なぜ聴覚が過敏になるのか?
すべての音が大きく聞こえたり、音の取捨選択ができなかったり、特定の音を嫌がったりする原因は、外部からの情報や刺激を調節するためのフィルターがかかっていないからだと考えられています。
通常私たち人間は、外部からの刺激や情報をダイレクトにそのまま感じているわけではなく、余計な刺激や情報を無意識に、自動的に排除、調節して感じることができるのです。
しかし、発達障がいの人の中には、外部からの刺激や情報を自動的に調整することができないため、そのままダイレクトに刺激や情報を感じ取ってしまう人がいるんですね。
当事者の声
私は感覚刺激について、20年以上も語ってきました。それにもかかわらず、いまだに、感覚刺激により苦痛や不快感を認めない人がけっこういることに、とまどっています。
感覚刺激は、ふつうの人にもあります。くぎで黒板をこする音は、たいていの人が大嫌いです。〈省略〉知人の女性は、朝、目ざめたばかりのとき、聴覚がとても敏感で、最初の30分くらいはふつうの音でも不快になることがあると言います。〈省略〉
ふつうの人にはほとんど、あるいはまったく気にならない感覚刺激が、自閉症スペクトラムの人には日常生活を送る上で深刻なストレスになりかねません。
私は大きな騒音を聞くと、耳が痛くなります。それも、歯医者のドリルが神経にあたったような痛さです。
大型スーパーマーケットに行くとパニックを起こしたり、中にいることに耐えられない子どもや大人は、ほぼ間違いなく感覚刺激の問題を抱えています。(テンプル・グランティン著/自閉症感覚―かくれた能力を引きだす方法より)
具体的な対応方法
聴覚過敏の問題は、発達障がいの子どもや大人にとって、日常生活を送る上で周囲の人が、配慮をしてあげなければならない深刻な問題です。
彼らが安心して生活を送るためには、耳から入る音の大きさを軽減してあげなければなりません。
特定の音を嫌がる ⇒ 音をなくす・小さくする。
たくさんの声や音が聞こえる ⇒ 聞こえる音を少なくする。音をなくす。
これが基本的な支援の方法です。
最後に
発達障がいの子どもや大人の聴覚過敏の問題は、彼らにとってとても深刻な問題です。特に保育園や幼稚園は、子どもたちの大きな声やあそぶ音などであふれていますよね。聴覚が過敏な子は園の中にいることは苦痛でしかありませんし、登園することすら嫌がるでしょう。
特に自閉症スペクトラムの子どもは自分の気持ちや考えを伝えることが苦手なので、周囲の大人が子どもの表情や言動から感じ取って、その子に合った音の調整をしてあげることが必要になります。
どうしても調節が難しい学校行事などの場面では(子どもが嫌がらなければ)、子どもが聞こえる音を少なくするための、防音・消音ヘッドホン(イヤーマフ)などを使う必要があるかもしれません。
聴覚過敏の問題は子ども自身で解決することが難しいので、私たち大人が子どもの表情や行動から気づいて助けてあげることが、一番大切なことかもしれませんね。