
発達障がいの子どもや大人の中には、特定のものに触ると不快に感じたり痛く感じたりする、逆に何も感じなかったりする、触覚に特性を持った人がいます。
今日は、発達障がいと触覚過敏について書きたいと思いますので、よろしくお願いします。
触覚過敏の例
- Tシャツなど服についているタグを痛がる。
- 絹の服など特定の素材の服しか着られない。
- 身体の一部を触れられると痛がる・怒る。
- 雨がからだに当たると痛いため、雨の日は外に出たがらない。
- 何度も洗濯した後でなければ服を着られない。
- 何度も下着を替えたがる。
- 扇風機を嫌がる(痛い)。
- 髪や顔を洗うのを嫌がる・怖がる。
- 頭をなでられるのを嫌がる・なでられると痛がる。
- シャワーを嫌がる・痛がる
- 水道水を触れない・痛がる。
- 靴下をはかない・はいてもすぐぬぐ。
- 偏食がある。
などがあります。(聴覚過敏の問題はこちらの記事をごらん下さい)
なぜ触覚が過敏になるのか?
服のタグを痛がって、タグを取らないと服が着れなかったり、身体を触れられると痛がったりする原因は、外部からの情報や刺激を調節するためのフィルターがかかっていないからだと考えられています。
通常私たち人間は、外部からの刺激や情報をダイレクトにそのまま感じているわけではなく、余計な刺激や情報を無意識に、自動的に排除、調節して感じることができるのです。
しかし、発達障がいの人の中には、外部からの刺激や情報を自動的に調整することができないため(冷たいものを食べたり飲んだりすると、歯にしみて痛く感じるような知覚過敏の状態)、そのままダイレクトに刺激や情報を感じ取ってしまう人がいるんですね。
>当事者の声
高機能自閉症の当事者でアメリカの大学教授としても知られている、テンプル・グランティンさんは、自身の著書の中でこのように述べています。
ソックスの縫い目や、毛糸など目のあらい素材の肌触りが、つねに焼けつくように感じる人もいます。子どもがソックスやセーターを脱いでしまうのは、そのせいなのです。反抗しているのではありません。ソックスで足が痛いのです。人の手が腕に軽く触れただけで痛い人もいます。引きこもってしまうのは、社交性がないからではなく、人と体がすれ合うだけでも痛くて、肌にカミソリを当てられたように感じるからなのです。
今まで多くの人が、専門家でさえ、感覚刺激による問題を無視してきたのは、このような感覚が存在するなんて、とても想像ができないからでしょう。(テンプル・グランティン著/自閉症感覚より)
私も実際に経験したこと。
私が関わった子どもたちの中には、多いときで1日に30回近く下着を換える子どもや、砂を嫌がり砂遊びをしない子、靴下を嫌がりはかない子、触れると痛がって怒りだす子、扇風機の風邪を嫌がる子、顔を洗えない子、髪を洗えない子、シャワーを痛がる子、服を何度も洗った後じゃないと着れない子などがいました。
「扇風機の風に殴られて痛い」「シャワーにあたると、針でつつかれているみたい」「きのこやわかめは口の中が気持ち悪くなる」と教えてくれた子も中にはいました。
具体的な対応方法
触覚過敏の問題は、発達障がいの子どもや大人にとって、日常生活を送る上で周囲の人が、配慮をしてあげなければならない深刻な問題です。彼らが安心して生活を送るためには、触覚過敏が彼らに辛い思いをさせていることを理解し、外部からの刺激を軽減してあげなければなりません。
触れると痛がる ⇒ 触れない・ソーっと触れる。
靴下を嫌がる ⇒ 靴下をはかせない・はける素材の靴下にする。
これが基本的な支援の方法です。触覚が過敏に反応してしまうものは、除去をするか軽減するしかないんですね。
最後に
テンプル・グランティンさんも著書の中で記しているとおり、専門家ですら発達障がいの人たちの感覚過敏を理解できなかったのですから、一般の人にはまず理解することは難しいといえるかもしれません。
実際に私が学校の教師に感覚過敏の話しをしても、まったく聞き入れてもらえなかったことがありました。また、私のアドバイスを聞いてくれても、実際に支援をしてくれなかった教師もいました。きっと感覚過敏という経験をしたことがないので、学校や教師は理解することができなかったのでしょう。
しかし、当事者が書いた本を読んだり、実際に発達障がいの子どもや大人たちに聞くと、感覚過敏の問題は、簡単に見過ごしてはならない深刻な問題です。感覚過敏は1つの感覚だけが過敏ではなく、聴覚や視覚・触覚など、複数の感覚に過敏な面がみられることが多いと思います。
発達障がいの子どもたちは、このような感覚の問題を自分だけが感じていると思っていない子が多く(周りの子どもも同じだと思っている)、特に自閉症スペクトラムの子どもは自分の気持ちや考えを伝えることが苦手なので、子ども自身が自分の感覚について、親や先生に話すことはほとんどありません。
ですから、周囲の大人が子どもの表情や言動から感じ取って、その子に合った刺激や情報の調整をしてあげることが必要になるんですね。
※聴覚過敏の問題はこちらの記事をごらん下さい。